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\(\boldsymbol x = (x, y, z)\): 座標
\(\mathrm e\): 自然対数の底(立体)
\(e\): 電気素量(elementary charge)(斜体)
\(\varepsilon_0\): 電気定数, 真空の誘電率(electric constant, permittivity of vacuum)
\(\varepsilon\): 比誘電率(relative permittivity, dielectric constant, 誘電定数という訳語はあまりみかけない), 普通は, \(\varepsilon_\mathrm r\) などの記号を使うが, この教科書では \(\varepsilon\) を使っている. \((\varepsilon \varepsilon_0)\) で, ある物質(媒体)の誘電率となる.
アボガドロ数 \(N_\mathrm A = 6.02214 \times 10^{23}\)
ボルツマン定数 \(k_\mathrm B = 1.38066 \times 10^{-23} \ \mathrm{J \, K^{-1}}\)
真空での誘電率 \(\varepsilon_0 = 8.85419 \times 10^{-12} \ \mathrm{A\, s\, V^{-1}\, m^{-1}}\)
単位電荷 \(e = 1.60218 \times 10^{-19} \ \mathrm C\)
電位分布: 位置 \(\boldsymbol x = (x, y, z)\) によって定まる実数
ポアソン方程式
\(\rho_\mathrm e (\boldsymbol x)\): 局所電荷密度 \(\mathrm{[C \, m^{-3}]}\)
局所イオン濃度
第 \(i\) 成分イオンの局所濃度 \(c_i\)
\(c_i^0\): バルク中での \(i\) 成分のイオン濃度
\(W_i\): 第 \(i\) 成分イオンを無限遠から表面近くの \(\boldsymbol x\) まで運ぶのに必要な仕事
\begin{align} \rho_\mathrm e & = e(c^+ - c^-) \notag \\ & = c_0 e \left( \mathrm e^{ーe \psi (\boldsymbol x)/ (k_\mathrm B T)} - \mathrm e ^{e \psi(\boldsymbol x) / (k_\mathrm B T)} \right) \tag{4.3} \end{align}
式 (4.4) の 1 次元版である.
微分積分学で習った Taylor の定理を適用, 1 次までの項をとる.
\(\mathrm e^{e \psi(x)/(k_\mathrm B T)}\) を \(\psi\) の関数として, \(\psi=0\) で Taylor の定理を適用.
簡単のため \(\alpha = e/(k_\mathrm B T)\) とおく.
\begin{align*} \mathrm e^{e \psi(x) /(k_\mathrm B T)} &= \mathrm e^{\alpha \psi} \\ & = \mathrm e^0 + \frac{\mathrm d \mathrm e^{\alpha \psi}}{\mathrm d \psi}(0) \psi + \frac{1}{2}\frac{\mathrm d^2 \mathrm e^{\alpha \psi}}{\mathrm d \psi^2}(0) \psi^2 + \dotsb \\ & = 1 + \alpha\psi + \dotsb \\ & \approx 1 + \frac{e \psi}{k_\mathrm B T} \end{align*}
同様に
\begin{align*} \mathrm e^{- e \psi(x) /(k_\mathrm B T)} \approx 1 - \frac{e \psi}{k_\mathrm B T} \end{align*}
これを式 (4.5) に代入して式 (4.6) を得る.
これはおなじみの定(数)係数同次 2 階線形(常)微分方程式である.
一般解は
境界条件
\begin{align*} \psi(x=0) &= \psi_0 \\ \psi(x= \infty)& = 0 \end{align*}
微分方程式 (4.6*) の, 上記境界条件を満たす解は
単価イオンの場合
デバイ長
一価の塩のデバイ長(25°C の水における)は, 塩濃度 \(c_0 \ \mathrm{[mol \ L^{-1}]}\) を用いて
\(\lambda_\mathrm D\) は, バルク中での塩濃度 \(c_0\) を増大させると減少する.
多価イオンの場合
ここで, \(Z_i\) は \(i\) 番目のイオン価数であり, 濃度の単位は, \(\mathrm 1 \ \mathrm{m^3}\) あたりのイオン数である.
多価イオンの場合
ヒト血症は, 血液から赤血球, 白血球, 血小板を除いたものであり, \(\mathrm{143 \ mM \ Na^+}\), \(\mathrm{5 \ mM \ K^+}\), \(\mathrm{2.5 \ mM \ Ca^+}\), \(\mathrm{1 \ mM \ Mg^+}\), \(\mathrm{103 \ mM \ Cl^-}\), \(\mathrm{27 \ mM \ HCO_3^-}\), \(\mathrm{1 \ mM \ HPO_4^{2-}}\), \(\mathrm{0.5 \ mM \ SO_4^{2-}}\) のイオンが含まれる.
水の比誘電率は \(\varepsilon = 74.5\)
ヒト血症のデバイ長はどのくらいになるか.
濃度 \(\mathrm{mM = mmol \ L^{-1}}\) は, \(\mathrm{mol \ m^{-3}}\) に等しい
濃度 143 mM, 5 mM, 2.5 mM, 1 mM, 103 mM, 27 mM, 1 mM, 0.5mM にアボガドロ数をかけると, \(\mathrm{1 \ m^3}\) あたりのイオン数がでる.
その結果が以下のとおり
\begin{align*} c_\mathrm{Na}^0 & = 8.61 \times 10^{25} \ \mathrm{m^{-3}}, \ \ Z_\mathrm{Na} = 1, & c_\mathrm K^0 &= 3.01 \times 10^{24} \ \mathrm{ m^{-3}}, \ \ Z_\mathrm K = 1 \\ c_\mathrm{Ca}^0 & = 1.5 \times 10^{24} \ \mathrm{m^{-3}}, \ \ Z_\mathrm{Ca} = 2, & c_\mathrm{Mg}^0 &= 6.02 \times 10^{25}, \ \ Z_\mathrm{Mg} = 2 \\ c_\mathrm{Cl}^0 & = 6.20 \times 10^{25} \ \mathrm{m^{-3}}, \ Z_\mathrm{Cl} = -1, & c_\mathrm{HCO_3}^0 &= 1.63 \times 10^{25} \ \mathrm{m^{-3}} \ Z_\mathrm{HCO_3} = -1 \\ c_\mathrm{HPO_4}^0 & = 6.02 \times 10^{23} \ \mathrm{m^{-3}} \ Z_\mathrm{HPO_4} = -2, & c_\mathrm{SO_4}^0 & = 3.01 \times 10^{23}, \ \ Z_\mathrm{SO_4} = -2 \end{align*}
デバイ長は, 式 (4.11) で \(\kappa\) を求め, その逆数 \(\lambda_\mathrm D = 1 / \kappa\) をとる.
\begin{align*} \kappa & = \sqrt{ \frac{e^2}{\varepsilon \varepsilon_0 k_\mathrm B T} \sum_i c_i^0 Z_i^2 } \\ & = \sqrt{ \frac{(1.60 \times 10^{-19})^2}{(74.5)(8.85\times 10^{-12})(1.38 \times 10^{-23})(298)} (1.794 \times 10^{26}) } \end{align*}
\(k_\mathrm B = 1.38066 \times 10^{-23} \ \mathrm{J \, K^{-1}}\),
\(\varepsilon_0 = 8.85419 \times 10^{-12} \ \mathrm{A\, s\, V^{-1}\, m^{-1}}\),
\(e = 1.60218 \times 10^{-19} \ \mathrm C\) を使うと
完全解の導出は省略
無次元量(\(x\) の関数)
初期条件
解
表面電位が小さい場合, Taylor の定理を用いて
この一般解は*
\(*\) \(y = \psi r\) とおいて変形すれば, 定係数線形微分方程式が得られる.
表面電荷 \(\sigma\) と表面電位 \(\psi_0\) との関係.
グラハム方程式
電位が低い場合(Taylor の定理を使って, \(\sinh\) 項を近似)
\(\mathrm{(4 \, nm)^2}\) あたりに一つのイオン化官能基が存在する表面を考える.
この場合, SI 単位系での表面電荷密度は \(\sigma = 1.0 \times 10^{-2} \ \mathrm{A \, s\, m^{-2}}\) である.
この表面が \(\mathrm{ 10 \ mM \ NaCl}\) 水溶液と接している.
デバイ長は 25°C で \(3.04 \ \mathrm{nm}\) である
表面電位を求めよ.
25°C における水の比誘電率が 78.4 であるとする.
電位が低い場合 (4.31)
\begin{align*} \psi_0 &= \frac{\sigma \lambda_\mathrm D}{\varepsilon \varepsilon_0} = \frac{(0.01)(3.04 \times 10^{-9})}{(78.5)(8.854\times 10^{-12})} \\ & = 4.379340 \times 10^{-2} \\ & = 4.38 \times 10^{-2} \ \mathrm V \end{align*}
グラハム方程式を使った場合,
\begin{align*} \sinh \left( \frac{e \psi_0}{2 k_\mathrm B T}\right) = \frac{\sigma}{\sqrt{8 c_0 \varepsilon \varepsilon_0 (k_\mathrm B T)}} \end{align*}
\begin{align*} \psi_0 &= \frac{2 k_\mathrm B T}{e} \operatorname{arcsinh} \left( \frac{\sigma}{\sqrt{8 c_0 \varepsilon \varepsilon_0 (k_\mathrm B T)}}\right) \\ & = 3.970832 \times 10^{-2} = 3.97 \times 10^{-2} \ \mathrm V \end{align*}
電気二重層の単位面積あたりの(微分)電気容量
\begin{align*} \boxed{C_\mathrm{GC}^A = \frac{\mathrm d \sigma}{\mathrm d \psi_0}} &= \sqrt{\frac{2 e^2 c_0 \varepsilon \varepsilon_0}{k_\mathrm B T}} \cosh \left( \frac{e \psi_0}{2 k_\mathrm B T} \right) \\ & = \frac{\varepsilon \varepsilon_0}{\lambda_\mathrm D} \cosh \left( \frac{e \psi_0}{2 k_\mathrm B T} \right) \tag{4.33} \end{align*}
これはグラハム方程式から計算できる.
高次項を無視すると次を得る.
電気二重層は極板間距離がデバイ長であるコンデンサと同じように振る舞う.
参考, 平板コンデンサの単位面積あたり電気容量は \(\varepsilon \varepsilon_0 / d\).
イオンの有限サイズを無視
平均場理論である.
溶液中のイオンは連続的な電荷分布をもつと考えている.
鏡像効果を無視している.
溶媒が連続体であると仮定し, 媒質中の誘電率は一定と仮定している.
表面は分子レベルで平坦と仮定している.
統計力学
コンピューターシミュレーション
シュテルン層
\(C^\mathrm A\): 単位面積あたりの全電気容量
\(C^\mathrm A_\mathrm{St}\): シュテルン層の電気容量
\(C^\mathrm A_\mathrm{GC}\): グイ・チャップマン層の電気容量
コンデンサーの直列接続
電荷の溶出(化学エネルギーと静電エネルギーが等しくなると止まる).
対イオンの表面への移動
対イオンの表面からの開放
\begin{align*} g & = - \sigma \psi_0 + \int_0^{\sigma \psi_0} \,\mathrm d(\sigma^\prime \psi_0^\prime) - \int_0^{\psi_0} \sigma^\prime \, \mathrm d \psi_0^\prime = - \int_0^{\psi_0} \sigma^\prime \, \mathrm d \psi_0^\prime \end{align*}
拡散層の単位表面積あたりのギブズエネルギー
\begin{align*} g & = - \sigma \psi_0 + \int_0^\sigma \psi^\prime_0 \, \mathrm d \sigma^\prime \\ & = -\sigma \psi_0 + \int_0^{\sigma \psi_0}\mathrm d (\sigma^\prime \psi_0^\prime) - \int_0^{\psi_0} \sigma^\prime \, \mathrm d \psi_0^\prime \\ & = - \int_0^{\psi_0} \sigma^\prime \, \mathrm d \psi_0^\prime \tag{4.39} \end{align*}
グラハム方程式 (4.30) を用いると
\begin{align*} g & = - \int_0^{\psi_0} \sigma \, \mathrm d \psi_0^\prime = - \int_0^{\psi_0} \sqrt{8 c_0 \varepsilon \varepsilon_0 k_\mathrm B T} \sinh \left( \frac{e \psi_0^\prime}{2 k_\mathrm B T} \right) \\ & = - \sqrt{8 c_0 \varepsilon \varepsilon_0 k_\mathrm B T} \frac{2 k_\mathrm B T}{e} \left[ \cosh \left( \frac{e \psi_0^\prime}{2 k_\mathrm B T} \right)\right]_0^{\psi_0} \end{align*}
電位が低い場合はさらに, 簡単な関係式 (4.31) を用いて
表面電位が \(\mathrm{40 \ mV}\) で, \(\mathrm{0.01 \ M}\) の一価イオンの水溶液中での電気二重層の単位面積あたりのギブズ自由エネルギーを評価せよ.
温度は \(25 {}^\circ \mathrm C\) とし, この温度における水の比誘電率は \(78.4\) とする.
式 (4.41) から
式 (4.10) から, 25°:C で塩濃度 \(c_0 = 0.01 \ \mathrm{mol \, L^{-1}}\) におけるデバイ長は
図 4.7
電位が存在する場合も, 界面張力の変化はギブズ等温吸着式 (3.59) により計算できる.
自由に動く分子.
化学ポテンシャル \(\mu_i\) の代わりに, 電気化学ポテンシャル \(\mu_i^*\) を使用する.
電位はガルバニ電位なので記号として \(\varphi\) を使用する.
\(\varGamma_\mathrm i\) と \(\varGamma_\mathrm e\) は, それぞれ溶液中のイオンおよび金属中の電子の界面余剰濃度.
\(\varGamma_\mathrm i\) の \(_\mathrm i\) は, 溶液内部を表す記号で, 第 \(i\) 成分を表すのではない.
\(\varphi^\alpha\) と \(\varphi^\beta\) は 2 つの相のガルバニ電位である.
\(F_\mathrm A\) はファラデー定数.
金属の場合, どの場所でも電位は一定値であり, \(\varphi^\alpha\) は明確に定義される.
電解質中の場合, 表面近傍でのポテンシャルは距離に依存する. 表面から十分に離れてはじめて電位は一定となる.
電気的中性則
これを使って (4.43) を書き換え
\begin{align*} \mathrm d \gamma = - \sum_{i=1}^n \varGamma_\mathrm i \mathrm d \mu_i - \varGamma_\mathrm e \mathrm d \mu_\mathrm e - \sigma \mathrm d( \varphi^\alpha - \varphi^\beta) \tag{4.44} \end{align*}
ここでの表記法では
通常は, \(\varphi^\alpha - \varphi^\alpha\) は外部からの電圧 \(U\) とは一致しない. 差を \(U_0\) とする.
\(C^\mathrm A\) が定数の場合
これを式 (4.45) に代入して, もう一度積分
\begin{align*} \gamma_ - \gamma_0 & = - C^\mathrm A \int_{U_0}^U (U^\prime - U_0) \, \mathrm d U^\prime \\ & = - \frac{C^\mathrm A}{2}(U - U_0)^2 \tag{4.48} \end{align*}
\(\mathrm{KF}\), \(\mathrm{NaF}\), \(\mathrm{CsF}\) を含む水溶液中でゼロ電位点(pzc)は一定値をとる.
\(\mathrm{KOH}\), \(\mathrm{KSCN}\), \(\mathrm{KI}\) の溶液中では異なったゼロ電位点が得られる.
イオンの金属表面への吸着はよくわかっていない.
ヨウ化銀の表面: \(\mathrm{Ag^+}\) と \(\mathrm{I^-}\) の規則格子の存在が想像される.
同数の \(\mathrm{Ag^+}\) と \(\mathrm{I^-}\) が存在し, 表面は電荷をもつ.
\(\mathrm{I^-}\) のほうが \(\mathrm{Ag^+}\) よりもヨウ化銀表面への親和性が幾分高いので,
例えば \(\mathrm{ [Ag^+] = [I^-] = 10^{-8} \ M }\) の場合
例えば \(\mathrm{Ag NO_3}\) を加え, 溶液中の \(\mathrm{Ag^+}\) 濃度を増加させることで表面を中性化できる.
\(10^{-5.5} \ \mathrm M\) の非常に低濃度の \(\mathrm{AgNO_3}\) を加えるだけで \(\mathrm{AgI}\) のゼロ電位点に到達する.
この基準点から \(\mathrm{Ag^+}\) または \(\mathrm{I^-}\) の濃度を変化させ, 表面電荷を正または負にできる.
そのため, \(\mathrm{Ag^+}\) または \(\mathrm{I^-}\) は, \(\mathrm{AgI}\) の電位決定イオンと呼ばれる.
\(\mathrm{Ag^+}\) の濃度が \(\mathrm{[Ag^+]_{pzc}}\) と等しくなるとき, 表面電荷と表面電位がゼロになる.
濃度が \(\mathrm{[Ag^+]_{pzc}}\) の 10 倍のとき, 25°C で
ヨウ化銀(\(\mathrm{AgI}\))の電気的に中性な完全結晶表面では, \(\mathrm{Ag^+}\) 間距離は約 \(\mathrm{ 0.4 \ nm}\) である.
そのため, \(\mathrm{Ag^+}\) の表面積は \(\mathrm{0.16 \ nm^2}\) であり, \(\mathrm{1 \ nm^2}\) あたりに \(\mathrm{6.25}\) 個の \(\mathrm{Ag^+}\) が存在する.
ここで, この結晶を \(\mathrm{25 ^\circ C}\) で \(\mathrm{1 \ mM}\) の \(\mathrm{KNO_3}\) 水溶液の中に入れ, 電位差を \(\mathrm{100 \ mV}\) かける.
表面の \(\mathrm{Ag^+}\) 濃度は, どれだけ上昇するか?
表面電荷を見積もるために, 式 (4.30) のグラハム方程式を用いる.
\(\psi_0 = 0.100 \ \mathrm V\)
\(\mathrm{1 \ mM}\) の \(\mathrm{KNO_3}\): 個数濃度は $(1 \times 10`^{-3} )N\_:nbsphinx-math:mathrm{A}` , \mathrm{L^{-1}}`= 6.02 :nbsphinx-math:times 10`^{23} \mathrm{m^{-3}} $
\begin{align*} \sigma & = \sqrt{8c_0 \varepsilon \varepsilon_0 (k_\mathrm B T)} \sinh \left( \frac{e \psi_0}{2 k_\mathrm B T}\right) \\ & = \sqrt{8 (6.02\times 10^{23})(78.4)(8.85 \times 10^{-12})(1.38\times 10^{-23})(298) } \sinh (1.945336) \\ & = 1.270206 \times 10^{-2} = 0.0127 \ \mathrm{C \, m^{-2}} \end{align*}
これは, $ 0.079 \mathrm{nm^{-2}}`$(\ :math:`1 \ \mathrm{nm^2} あたり 0.079 個)に相当する.
酸化物(たとえば, \(\mathrm{SiO_2}\), \(\mathrm{TiO_2}\), \(\mathrm{Al_2O_3}\)), タンパク質, 水溶性高分子
これらの表面には電離官能基が存在する.
ヒドロキシ基, カルボキシル基, 硫酸基, アミノ基などの官能基は \(pH\) に応じて水素イオンを受け取ったり放出したりする.
電位決定イオンは, \(\mathrm{OH^-}\) と \(\mathrm{H^+}\) である.
官能基の濃度 \(\mathrm{[AH]}\), \(\mathrm{[A^+]}\) は単位面積あたりで表されている.
\(\mathrm{[H^+]_{local}}\) は表面での局所プロトン濃度(体積あたり)
25°C で
表 4.1 各酸化物のゼロ電荷点
試料 |
ゼロ電荷点 |
---|---|
SiO2 |
1.8〜3.4 |
TiO2 |
2.9〜6.4 |
Al2O3 |
8.1〜9.7 |
MnO2 |
1.8〜7.3 |
Fe3O4 |
6.0〜6.9 |
α-Fe2O4 |
7.2〜9.5 |
表面電荷がゼロになる pH.
マイカは容易にへき開し, 広範囲にわたって原子レベルで平らな面を得ることができる.
平面部分: マイカ中の陽イオンが溶け出すことによって帯電.
端: ヒドロキシ基が帯電の原因.
へき開のため, ほとんどが平面と考えられる.
水中では表面電荷がほぼ一定となり, pH にはほとんど依存しない.
金属(導体)の場合, 電荷担体濃度は \(10^{29} \ \mathrm{m^{-3}}\) 程度, 電気伝導率は \(10^6 \sim 10^8 \ \mathrm{S\, m^{-1}}\) 程度.
絶縁体の電気伝導率は \(10^{-6} \ \mathrm{S \, m^{-1}}\) 程度.
半導体の例
\(25^\circ \mathrm C\) のゲルマニウム完全結晶の場合, 自由電子密度は \(3 \times 10^{19} \ \mathrm m^{-3}\), モル濃度では, \(5 \times 10^{-8} \, \mathrm{M}\).
半導体中の電荷担体密度は水溶性電解質中のイオン濃度と比べるとかなり小さい.
しかし, 溶液中のイオンよりも, 半導体の電子のほうが \(10^8\) 倍ほど高い移動度をもつため, 半導体の電子と溶液中のイオンが同程度の電気伝導率をもつことになる.
ドーピング
半導体に少量の \(\mathrm{P, \ As, \ Sb}\) を加えることで, 電子密度が増加する.
半導体に少量の \(\mathrm{B, \ Al, \ Ga}\) を加えることで, 正孔密度が増加する.
ゲルマニウムの 25°C でのデバイ長を評価せよ.
ただし,(比)誘電率を \(\varepsilon = 16\), 自由電子密度を(モル濃度換算で) \(5 \times 10^{-8} \ \mathrm M\) とする.
電子濃度は
式 (4.8) および \(\lambda_\mathrm D = 1 / \kappa\) より
\begin{align*} \lambda_\mathrm D & = \sqrt{ \frac{\varepsilon \varepsilon_0 k_\mathrm B T}{2 c_\mathrm e e^2}} \\ & = \sqrt{ \frac{(16)(8.85 \times 10^{-12})(1.38 \times 10^{-23})(298)}{(2)(5 \times 10^{-5})((6.02 \times 10^{23})(1.60 \times 10^{-19})^2} } \\ & = 6.146970 \times 10^{-7} = 6.15 \times 10^{-7} \ \mathrm m \end{align*}
液中に分散した粒子の表面電荷
直径 \(0.5 \ \mathrm{mm}\) の白金線が \(0.1 \ \mathrm{M \, KCl}\) 溶液中に電極として挿入されており, \(\mathrm{Ag/AgCl}\) が対電極である.
この線に \(0.1 \ \mathrm{V}\) から \(0.3 \ V\) に階段的な電位変化 \(\Delta U\) を与える.
白金線に比べて \(\mathrm{Ag/AgCl}\) は広い表面積をもち, 可逆電極である.
白金にとって, 印加電圧は非常に小さいため, 電気化学的な反応は怒らず, ファラデー電流は流れない.
ナビエ・ストークス方程式
連続の式
帯電した平面基板上に液体がある状況を考える.
表面に電場をかけると, 液体が動きだす.
このような現象を電気浸透とよぶ.
基板の電荷により, 基板近くで対イオンの濃度が高くなる.
この過剰な対イオンは電場により逆符号の電極へと動く. この際, まわりの溶媒分子も引きずられ, 流れが生じる.
\begin{align*} \frac{\mathrm d V}{\mathrm d t} & = \pi r_c^2 v_0 = - \pi r_c^2 \varepsilon \varepsilon_0 \frac{E \zeta}{\eta} \tag{4.72} \end{align*}
\(25^\circ\mathrm C\).
長さ \(1 \ \mathrm{cm}\), 直径 \(100 \ \mathrm{um}\) の毛管に沿って電圧 \(1 \ \mathrm V\) を印加する.
電場は均一で, \(\boldsymbol E = 100 \ \mathrm{V \, m^{-1}}\) となる.
毛管は水で満たされ, ゼータ電位は \(0.05 \ \mathrm{V}\) である.
単位時間あたりに流れる電解質の量はいくらか.
水の粘度を \(\eta = 1.0 \times 10^{-3} \ \mathrm{kg \, s^{-1} \, m^{-1}}\) とする.
\begin{align*} \frac{\mathrm d V}{\mathrm d t} & = \pi r_c^2 v_0 = - \pi r_c^2 \varepsilon \varepsilon_0 \frac{E \zeta}{\eta} \\ & = \pi (5.0 \times 10^{-5})^2(78.4)(8.85 \times 10^{-12}) \frac{(100)(0.05)}{(1.0 \times 10^{-3})} \\ & = 2.724703 \times 10^{-14} = 2.72 \times 10^{-14} \ \mathrm{m^3 \, s^{-1}} \end{align*}
電気泳動として, 電荷を持った粒子の電場中の運動
例として球形粒子の運動を考える.
仮定
印加電場, それに伴う運動はポアソン・ボルツマン方程式で与えられる粒子のまわりの電気二重層に影響を与えない.
印加電場は粒子の存在下でも均一である.
粒子の流体力学的半径は \(R + \delta\). 表面から \(\delta\) の距離に, 結合イオンと液体分子がせん断面をつくる.
\(\zeta\) を距離 \(\delta\) 離れたところの電位とする.
半径 \(R + \delta\) の粒子中にある全電荷を \(Q\) とする.
\(Q\) は, 半径 \(R + \delta\) の仮想的球面の表面電荷密度 \(\sigma_\delta\) と表面積の積に等しい.
電場 \(\boldsymbol E\) は粒子と局所電荷がゼロでない液体部分(\(\lvert \rho_\mathrm e \rvert > 0\))に対して力をかける.
仮定: 電気二重層の全電荷が半径 \(R + \lambda_\mathrm D\) の位置に存在すると近似する.
電気二重層の全電荷は \(-Q\) である.
電場は, 電荷 \(Q\) で半径 \(R\) の内球, 電荷 \(-Q\) で半径 \(R+ \lambda_\mathrm D\) の外球に対して働く.
それぞれの球が, ストークス則に従ったドリフト速度で移動する.
液中をドリフト速度 \(v\) で移動する球の摩擦力(層流を仮定)は,
内球に印加された力は \(QE\), 外球に印加された力は \(-QE\), よって, ドリフト速度はそれぞれ
\begin{align*} v &= v_i + v_0 = \frac{QE}{6 \pi \eta R}\left(1 - \frac{1}{1 + \lambda_\mathrm D/R} \right) \\ & = \frac{QE\lambda_\mathrm D}{6 \pi \eta R^2} \left(1 + \frac{\lambda_\mathrm D}{R} \right)^{-1}\tag{4.76} \end{align*}
せん断面と球表面の距離 \(\delta\) は, デバイ長 \(\lambda_\mathrm D\) よりはるかに小さいと考えられ, 次が成立する.
\(Q\) は \(R + \delta \approx R\) の表面に一様に分布していると考えられ, このとき, 表面電荷を \(\sigma_\delta\) とすると
グラハム方程式より, せん断面 \(R + \delta \approx R\) での電位 \(\zeta\) との間に次の関係がある.
式 (4.76) に式 (a), (b) を代入して, \(\lambda_\mathrm D \ll R\) の場合
\(\lambda_\mathrm D\) \(\gg\) \(R\) の場合
[1]:
# 具体例 4.1
import numpy as np
e_unit = 1.60218e-19
eps_0 = 8.85419e-12
k_b = 1.38066e-23
n_a = 6.02214e23 # Avogadro's number
mms = np.array([143, 5, 2.5, 1, 103, 27, 1, 0.5])
c0s = np.array([861, 30, 15, 6, 620, 163, 6, 3])
zs = np.array([1, 1, 2, 2, -1, -1, -2, -2])
zs2 = zs * zs
s = np.dot(c0s, zs2) * 1e23
ksqrd = e_unit**2 / eps_0 / (74.5) / k_b / (273 + 36) * s
k = ksqrd**0.5
lmd = 1 / k
n_ions = n_a * mms
print(n_ions)
print('sum c_i Z_i^2 = {:.6e}'.format(s))
print('kappa = {:.6e}'.format(k))
print('lambda_D = {:.6e}'.format(lmd))
kappa = np.sqrt((1.6e-19)**2 / 74.5 / 8.85e-12 / 1.38e-23 / 298 * 1.794e26)
lmdt = 1 / kappa
print('Using truncated values:')
print('lambda_D = {:.6e}'.format(lmdt))
[8.6116602e+25 3.0110700e+24 1.5055350e+24 6.0221400e+23 6.2028042e+25
1.6259778e+25 6.0221400e+23 3.0110700e+23]
sum c_i Z_i^2 = 1.794000e+26
kappa = 1.279226e+09
lambda_D = 7.817226e-10
Using truncated values:
lambda_D = 7.683626e-10
[1]:
# 具体例 4.2
import numpy as np
#
# constants
#
e_unit = 1.60218e-19 # elementary charge
n_a = 6.02214e23 # Avogadro's number
eps_0 = 8.85419e-12 # electric constant
eps = 78.4 # relative permittivity at 25C
k_b = 1.38066e-23 # Bolzman constant
sgm = 0.01 # A s m^-2
t = 273 + 25
lmd_d = 3.04e-9
# (4.31)
psi_0 = sgm * lmd_d / eps / eps_0
print('Eq. (4.31) psi_0 = {:.6e}'.format(psi_0))
# (4.30)
c_0 = 10 * n_a # mM = mol m^{-3}
sinha = sgm / np.sqrt(8 * c_0 * eps * eps_0 * k_b * t)
a = np.arcsinh(sinha)
psi_0 = a / e_unit * 2 * k_b * t
print('Eq. (4.30) psi_0 = {:.6e}'.format(psi_0))
Eq. (4.31) psi_0 = 4.379340e-02
Eq. (4.30) psi_0 = 3.970832e-02
[3]:
# 具体例 4.3
g = eps * eps_0 / 2 / 3.04e-9 * 0.04**2
print('g = {:.3e}'.format(g))
g = 1.827e-04
[4]:
# 具体例 4.4
import numpy as np
e_unit = 1.60218e-19 # elementary charge
n_a = 6.02214e23 # Avogadro's number
eps_0 = 8.85419e-12 # electric constant
eps = 78.4 # relative permittivity at 25C
k_b = 1.38066e-23 # Bolzman constant
psi_0 = 0.100
tt = 298
a = e_unit * psi_0 / 2 / k_b / tt
print('{:.6e}'.format(a))
b = 1.6e-19 * .1 / 2 / 1.38e-23 / 298
print('{:.6e}'.format(b))
c = np.sqrt(8 * 6.02e23 * 78.4 * 8.85e-12 * 1.38e-23 * 298) * np.sinh(b)
print('{:.6e}'.format(c))
print('{:.6e}'.format(c/1.6e-19))
1.947055e+00
1.945336e+00
1.270206e-02
7.938786e+16
[2]:
# 具体例 4.5
import numpy as np
lmdsq = 16 * 8.85e-12 * 1.38e-23 * 298 / 2 / 5e-5 / 6.02e23 / 1.6e-19**2
lmd = np.sqrt(lmdsq)
print('{:.6e}'.format(lmd))
e_unit = 1.60218e-19 # elementary charge
n_a = 6.02214e23 # Avogadro's number
eps_0 = 8.85419e-12 # electric constant
eps = 16 # relative permittivity at 25C
k_b = 1.38066e-23 # Bolzman constant
psi_0 = 0.100
tt = 298
slmdsq = eps * eps_0 * k_b * tt / 2 / 5e-5 / n_a / e_unit**2
slmd = np.sqrt(slmdsq)
print('{:.6e}'.format(slmd))
6.146970e-07
6.140436e-07
[2]:
# 具体例 4.7
import numpy as np
eta = 1e-3
eps = 78.4
eps_0 = 8.85e-12
r_c = 5e-5
vv = 100
zeta = 0.05
dvdt = np.pi * r_c**2 * eps * eps_0 * vv * zeta / eta
print('dV/dt = {:.6e}'.format(dvdt))
dV/dt = 2.724703e-14
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