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完全な濡れ(perfect wetting, complete wetting, total wetting) \(\theta = 0\)
3 相接触線(濡れ線)の形成, 部分的な濡れ(partial wetting)
\(\theta < 90{}^\circ\): hydrophilic
\(\theta > 90{}^\circ\): hydrophobic
「濡れが好まれる」, 不自然な訳, Wetting is of the surface is favorable. むしろ, 「濡れは親和的」, といった訳が
液・気・固 の 3 相が存在する場合
気相 G の添字は省略されるのが普通. このほうが見やすい.
ヤング方程式
力のつりあいから,
図 6.2
これからヤングの式が導出できる.
平坦面状の液滴
液滴が無限小だけ広がるときのギブズエネルギー変化
重力の影響が無視できる場合, 液滴の形は, 球形帽子(球を平面で切り取った形)となる(なぜか考えよ).
球の半径を \(R\) (変数)とする.
球形帽子の表面積は
液滴の接触面(円形になる)の半径が \(a\) から \(a + \mathrm d a\), 液滴の高さが \(h\) から \(h + \mathrm d h\) に変化したと仮定する.
(\(\mathrm d a > 0\) ならば \(\mathrm d h < 0\) となる.)
固液接触面積の変化は,
液体の表面(気液接触面)の変化は,
液滴の体積一定の条件から(教科書 (6.4)–(6.6)), \(a\) と \(h\) につぎの関係が成立
この関係を使って, (6.3) を変形して
表面のギブズエネルギーは, 界面張力 :math:`boldsymbol times` 面積で表されるので,
液表面積(気液界面積)の変化にともなうギブズエネルギー変化は
固液接触面積の変化に伴うギブズエネルギー変化は
(dGA), (dGSL) に (6.8), (dASL) を代入して, 平衡点(トータルのギブズエネルギー変化 = 0)を求める.
整理して
(\(V\) は \(a\) と \(h\) との関数だから)
\begin{align*} \mathrm d V &= \frac{\partial V}{\partial a} \, \mathrm d a + \frac{\partial V}{\partial h} \, \mathrm d h \\ & = \frac\pi a h \, \mathrm d a + \frac{\pi}{2}(a^2 + h^2) \, \mathrm d h \, \tag{6.5} \end{align*}
\begin{align*} \mathrm d A_\mathrm L & = 2 \pi a \, \mathrm d a - 2 \pi h \frac{a}{R} \, \mathrm d A = 2\pi a \left( 1 - \frac{h}{R}\right) \, \mathrm d a \\ & = 2 \pi a \frac{R- h}{R} \, \mathrm d a = 2 \pi a \, \cos \theta \, \mathrm d a \tag{6.8} \end{align*}
\begin{align*} \mathrm d G & = (\gamma_\mathrm{SL} - \gamma_\mathrm L) \, \mathrm d A_\mathrm {SL} \\ & = 2\pi a (\gamma_\mathrm{SL} - \gamma_\mathrm L ) \, \mathrm d a + 2 \pi a \gamma_\mathrm L \, \cos \theta \, \mathrm d a \tag{6.9} \end{align*}
面積が広がるとき, 3 相接触線の長さも増加する.
新しい接触線を形成する場合にエネルギーを必要とする.
1 \(\mu\mathrm{m}\) 以下の液滴では, 線張力も考慮する必要がある.
\(\kappa_l\): 線張力
\(a\): 3 相接触線の曲率半径
シクロヘキサン液体の線張力を気化熱 \(\Delta_\mathrm{vap} U = 30.5 \, \mathrm{kJ \, mol^{-1}}\) から見積もれ.
密度 \(\rho = 773 \, \mathrm {kg \, m^{-3}}\), 分子量 \(M = 84.2 \, \mathrm{g \, mol^{-1}}\), \(a_\mathrm M = 0.565 \, \mathrm{nm}\) とする.
\begin{align*} \kappa_l & = \frac{\mathrm{\Delta_\mathrm{vap} U}}{3 N_\mathrm A a_\mathrm M} \\ & = \frac{(30500)}{(3)(6.02 \times 10^{23})(0.565\times 10^{-9})} \\ & = 2.9890532 \times 10^{-11} = 2.99 \times 10^{-11} \ \mathrm {J/m} \end{align*}
広がり係数(spreading coefficient)
平衡状態で完全濡れの場合は, \(S = 0\).
非平衡状態では, \(S > 0\) になりうる.
\(S < 0\) では, 有限の接触角が形成される.
実験室で湿度 100%でなくても, 水滴近くは湿度 100% とみなせる.
空気中の水蒸気の拡散係数が十分遅いため, 表面付近は湿度 100 % に保たれる.
通常, 温度上昇により, \(\gamma_\mathrm L\) が \(\gamma_\mathrm S - \gamma_\mathrm{SL}\) よりかなり速く減少し, 接触角 \(\theta\) は小さくなる.
液体が沸点に達しない場合, \(S=0\) \((\theta=0)\) となる温度, 濡れ温度(wetting temperature)が存在する.
濡れ転移
濡れ温度 \(T_\mathrm w\) 以下では, 接触角が観測され,
濡れ温度 \(T_\mathrm w\) 以上では, 液体膜が形成される.
多くの場合, \(\gamma_\mathrm L\) の評価は可能, \(\gamma_\mathrm S\) の評価は難しいが可能.
\(\gamma_\mathrm{SL}\) は評価できない.
\(\gamma_\mathrm{SL}\) を \(\gamma_\mathrm L\), \(\gamma_\mathrm S\) で表現する.
\(\gamma_\mathrm S^\mathrm d\), \(\gamma_\mathrm S^\mathrm p\) の上付き文字は, べきの指数でなくて分散, 極性を意味する添字.
半径 \(5 \mu \mathrm m\) の完全濡れ性の毛管での水の毛管上昇高を求めよ.
\begin{align*} h & = \frac{(2)(0.072)}{(5 \times 10^{-6})(9.81)(997)} \\ & = 2.9446137 = 2.94 \ \mathrm{m} \tag{6.20} \end{align*}
毛管上昇により, 固気界面が固液界面に置き換わる. これによるギブズエネルギー変化は
毛管上昇により, (管断面積×高さ)分の水が重力に抗して上昇する. 微小高 \(\mathrm d h\) の変化に対応するギブズエネルギー変化は
併せて
釣り合いから
ヤングの式より, \(\gamma_\mathrm S - \gamma_\mathrm{SL} = \gamma_\mathrm L \cos \theta\) だから
Washburn の式(重力の影響を無視した場合)
\begin{align*} \pi( r^2 + h^2) & = \pi R^2 \left( \sin^2 \theta + 1 - 2 \cos \theta + \cos^2 \theta \right) \\ & = 2\pi R^2 ( 1 - \cos \theta) \tag{6.25} \end{align*}
変形
水表面(\(\gamma_\mathrm L = 0.072 \ J \, \mathrm{J \, m^{-2}}\)), \(5 \, \mathrm{\mu m}\) の疎水性微小球(\(\theta = 90{}^\circ\))を取り除くのに必要な仕事と粘着力
(6.26), (6.27) の逆向きの操作であるが, 計算は同じ(符号のみ逆だが, この場合絶対値が求まればよい).
\begin{align*} \Delta G & = \pi R^2 \gamma_\mathrm L ( \cos \theta - 1) \\ & = \pi (5\times 10^{-6})^2 (0.072) (\cos \frac{\pi}{2}- 1)^2 \\ & = 5.654866 \times 10^{-12} = 5.7 \times 10^{-12} \ \mathrm{J} \end{align*}
前進接触角(advancing contact angle): 濡れ線が前進する直前の接触角
後退接触角(receding contact angle): 濡れ線が後退する直前の接触角
通常 \(\theta_\mathrm{adv}\) は \(\theta_\mathrm{rec}\) よりも大きい.
\(\theta_\mathrm{adv} - \theta_\mathrm{rec}: \ 5 \sim 20 ^\circ\), さらに大きい場合もある.
表面粗さ
表面の化学的・構造的不均一性
溶解物質の 3 相接触線への吸着
3 相接触線での表面張力の作用
表面粗さの影響
不均一な平坦面での接触角
パターニングされた表面での水滴の接触角.
金の表面にヘキサデカンチオール \(\mathrm{HS(CH_2)_{15}CH_3}\) とジウンデカンジスルフィドカルボン酸 \(\mathrm{[S(CH_2)_{11}COOH]_2}\) を各々 2.5 と 3.0 \(\mu \mathrm{m}\) 幅で平行ストライプ状にパターニング.
純粋なヘキサデカンチオール単分子膜(9.3.1 項)は疎水性で, pH 7.0 での前進接触角は \(107.8 {}^\circ\).
ジスルフィドはカルボン酸基が表面に出るため, より親水性である(前進接触角は \(50.1 {}^\circ\))
ストライプに平行な方向の有効接触角を求めよ.
表面の粗さと不純物つづき
表面構造の長さスケールと形状
巨視的には接触角履歴, 微視的にはヤング方程式
巨視的スケールでの接触角履歴の観測は必ずしもヤング方程式の破れを意味しない.
マイクロピラー表面での研究
超撥水性表面(superrepellent surface)
以下の 2 つの条件を満たす.
水のみかけの接触角が 150° 以上である.
基板状に水滴を置き, 基板を傾けた場合, 10° 以下で水滴がころがり落ちる.
[20]:
#### 6.8
import numpy as np
coste = (2.5) / (2.5 + 3.0) * np.cos (np.pi * 107.8 / 180) + (3.0) / (2.5 + 3.0) * np.cos(np.pi * 50.1 / 180)
theta = np.arccos(coste)
theta_deg = theta * 180
print('{:.7e}'.format(coste))
print('{:.7e}'.format(theta))
print('{:.7e}'.format(theta_deg))
2.1092921e-01
1.3582709e+00
2.4448876e+02
[21]:
#### 6.6
import numpy as np
r = 5e-6
gmm_l = 0.072
theta = np.pi/2
dg = np.pi * r**2 * gmm_l * (np.cos(theta) - 1)**2
f = 2 * np.pi * r * gmm_l * (np.sin(theta/2))**2
print('{:.7e}'.format(dg))
print('{:.7e}'.format(f))
5.6548668e-12
1.1309734e-06
[2]:
#### 6.5
h = 2 * 0.072 / 5e-6 / 9.81 /997
print('{:.7e}'.format(h))
2.9446137e+00
[1]:
#### 6.2
import numpy as np
kl = 30500 / 3 / 6.02e23 / 0.565e-9
print('{:.7e}'.format(kl))
2.9890532e-11
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